遠くて、中心から遠く離れた、中心世界から隔離された場所。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

遠くて、中心から遠く離れた、中心世界から隔離された場所。

「最小限主義の心理学」不定期連載第15回

 

■最適な場所

 灯台の見える崖の上にポツンと佇む小さい家。

 世間と隔離されたその家で、薪を割り、火をおこし、世捨て人のように生きる。

 時折遠くを見つめる目がかっこよくて、あごひげは伸ばし放題。

 できれば、カスタムされたバイクとピックアップトラックが横付けされているといい。

 そんな暮らしに憧れて、若い頃に最適な場所を求めて移動を繰り返したが、海辺の崖の上で珈琲を飲み、詩を書く毎日。という人生はそのときに達成され、今はそこからほど遠い暮らしをしている。

 だから、時折、そんな暮らしに憧れる。

 今は年を重ねた分、もっと渋く崖の上に佇める。

 では、どこが最適な場所だろう?

 たとえば、映画『バベットの晩餐会』に出てくる寒村は、デンマークのユトランドにあるプロテスタントの村がモデル。質素倹約を旨に、小さな漁村で生きる村民がいて、ある日、パリの有名シェフが身分を隠して逃げ込んでくるというストーリー。ヨーロッパの田舎で、プロテスタント系の村はまさにミニマリズムの基礎ともいえる暮らしだ。だからゲルマン系のノルウェー、スウェーデン、デンマークといった少し寂しげな海沿いの村は隔絶感があっていい。

 ひろげると、カナダ、アラスカだっていい。

 遠い町。とおくて、ここから行きづらい。

 
次のページ辺境にある大きな都会?

KEYWORDS:

オススメ記事

沼畑 直樹

ぬまはた なおき

ミニマリスト。テーブルマガジンズ代表。元バックパッカー。

2013年、「ミニマリズム」「ミニマリスト」についての記事を発表し、佐々木典士氏とともにブログサイト≪ミニマル&イズム(minimalism.jp)≫をたち上げる。 著書は、小説『ハテナシ』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』(Rem York Maash Haas名義)など。


この著者の記事一覧